チャプター

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  18. 18
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  21. 21
  22. 22
  23. 23
  24. 24

旧約聖書

新約聖書

ルカによる福音書 22 リビングバイブル (JLB)

1.  イースト菌を入れないパンを食べる、ユダヤ人の過越の祭りが近づきました。 

2. 祭司長や他の宗教的指導者たちは、何とかイエスを殺そうと、あれこれ陰謀を巡らしていました。 群衆の暴動を引き起こさずにイエスを葬り去るうまい方法がないものかと、やっきになっていたのです。

3.  さて、十二人の弟子の一人イスカリオテのユダの心に、サタンが忍び込みました。 

4. ユダはわざわざ祭司長や神殿の警備隊長たちのところへ出かけ、イエスを売り渡す一番よい方法を相談しました。 

5. この協力に彼らは大喜びでした。 ほうびをやる約束までしたほどです。 

6. それでユダは、群衆が回りにいない時にひそかにイエスを逮捕しようと、チャンスをうかがい始めました。

7.  さて、過越の小羊を殺し、イースト菌を入れないパンといっしょに食べる、過越の日になりました。 

8. イエスはペテロとヨハネを先にやり、過越の食事をする場所を捜させました。

9.  「どこへ行けば、よろしいでしょう。」

10.  「エルサレムに入るとすぐ、水がめを運んでいる男に出会うから、あとについて行きなさい。 

11. 彼が入った家の主人に、『私どもの先生が、弟子たちといっしょに過越の食事のできる客間を見せていただきたい、と申しておりますが』と言いなさい。 

12. 主人は、用意万端ととのった、二階の広間を見せてくれるでしょう。 そこで食事の用意をしなさい。 さあ、急いで。」

13.  二人が町に行ってみると、何もかも言われたとおりです。 こうして、食事の準備はできあがりました。最後の晩餐

14.  やがて時間になり、一同は、その広間で、そろって食卓に着きました。 

15. まず口を切ったのは、イエスです。 「苦しみの始まる前に、ぜひ、いっしょに過越の食事をしたいと思っていました。 

16. 今だから言いますが、神の国で過越が実現するまで、わたしは二度と過越の食事をしません。」

17.  それから、ぶどう酒の杯を取り、感謝の祈りをささげてから、こう言われました。 「これを分け合いなさい。 

18. わたしは神の国が来るまで、二度とぶどう酒は飲みません。」

19.  次にパンを取り、神に感謝してから、それをちぎり、弟子たち一人一人に分け与えながら言われました。 「これはあなたがたに与える私の体です。 わたしの記念に、食べなさい。」

20.  食事のあと、杯を弟子たちに渡して言われました。 「このぶどう酒は、神があなたがたを救ってくださるという新しい契約を保証するものです。 つまり、あなたがたのたましいを買い戻すために、わたしが流す血の代わりなのです。 

21. それなのに、この食事にいっしょに座っている一人が、わたしを裏切るのです。 

22. わたしは死ななければなりません。 それが神のご計画なのです。 だが、裏切り者には、どんな恐ろしいのろいが待ち受けていることでしょうか……。」

23.  弟子たちは、そんなことをするのは、いったいだれだろう、といぶかりました。

24.  それが一段落すると、やがて実現する御国で、だれが一番偉いかということで、ああでもない、こうでもないと議論を始めました。

25.  イエスは、この有様をご覧になって言われました。 「この世では、王や高官たちが、支配者として権力をほしいままにしています。 

26. だが、あなたがたの間では違います。 一番よく人に仕える人こそ、指導者になるのです。 

27. この世では、主人が食卓に着き、召使に給仕をさせます。 だが、あなたがたの間では、それではいけません。 このわたしが給仕してあげるのですから。 

28. だがあなたがたは、わたしにふりかかった、さまざまの試練の時に、よくいっしょに耐え抜いてくれました。 

29. だから、父が、わたしに御国をお任せくださったように、わたしも、あなたがたにすばらしい特権をあげましょう。 

30. 御国で、わたしの食卓に着き、共に食事をする特権、また王座に座って、イスラエルの十二の部族をさばく特権です。

31.  シモン、シモン。 いいですか。 サタンがあなたがたを麦のように、ふるいにかけることを願い出ました。 

32. だが、安心しなさい。 あなたの信仰が全くだめにならないように、祈ってあげました。 だから、悔い改めて立ち直った時には、仲間の者たちもしっかり立てるように、力づけてやりなさい。」

33.  するとシモンは、とんでもないといった顔で、きっぱりと言いきりました。 「主よ、何をおっしゃるのです! 私は牢獄までもついてまいります。 ごいっしょに死ぬ覚悟もできております。」

34.  「ペテロよ。 残念ですが、はっきり言います。 明日の朝、鶏が鳴くまでに、あなたは三度、わたしを知らないと言いはるでしょう。」

35.  それから、弟子たちにお尋ねになりました。 「前に、神のすばらしい知らせを伝えようと、あなたがたを派遣した時、わずかの金も、旅行袋も、着替えも持たせませんでした。 その時、旅先で何か不自由しましたか。」「いいえ、ちっとも。」

36.  「だが今は、手持ちの物があれば、旅行袋も財布も持っていきなさい。 剣がなかったら、着物を売り払ってでも手に入れなさい。 

37. 『彼は罪人の一人に数えられた』という預言どおりのことが、わたしに起こるからです。 そうです。 預言者がわたしについて預言したことは、何もかも、そのとおりになるのです。」

38.  「先生。 剣なら二振りありますが。」「そうですか、それで十分です。」逮捕されたイエス

39.  それから、イエスは弟子たちと連れ立って部屋を出、いつものようにオリーブ山に行かれました。 

40. 「誘惑に負けないように、神に祈りなさい。」

41-42. こう言い残すと、イエスは、石を投げれば届くあたりまで歩いて行き、ひざまずいて祈り始められました。 「父よ。許していただけるなら、どうぞこの恐ろしい杯を取り除いてください。 ですが……、わたしの思いどおりにではなく、あなたのお心のままになさってください。」 

43. この時、天から御使いが現われ、イエスを力づけました。 

44. イエスは苦しみもだえながら、いよいよ力を込めて祈られます。 大粒の汗が、まるで血のしずくのように、したたり落ちました。 

45. ようやく立ち上がり、弟子たちのところに帰って来ると、どうでしょう。 弟子たちは、悲しみのあまり、疲れ果てて眠り込んでいます。

46.  「どうして眠っているのですか。 さあ、起きなさい。 誘惑に負けないように、祈りなさい。」

47.  こう言い終わらないうちに、十二弟子の一人ユダに先導されて、大ぜいの暴徒が押し寄せました。 ユダはイエスに駆け寄り、さも親しげに頬にくちづけのあいさつをしました。

48.  しかしイエスは、あわれむように、「ユダよ。 あなたは、くちづけでメシヤ(救い主)を裏切るのですか」と言われました。

49.  この事態の急変に取り乱した弟子たちは、「戦いましょう、先生。やつらをたたき切ってやりましょう!」と騒ぎだしました。 

50. そして一人が、大祭司の家来に襲いかかり、右の耳を切り落としました。

51.  「やめなさい。 それ以上手向かってはいけません。」イエスはこう命じてから、その家来の傷口にさわって、治されました。 

52. 次に、暴徒どもの先頭にいた祭司長、神殿の警備隊長、ユダヤ人の指導者たちに向かって言われました。 「剣やこん棒とは。 こんなものものしい武装をしなければならないほど、わたしは凶悪犯なのですか。 

53. なぜ神殿で捕らえなかったのですか。 毎日あそこにいたのに。 しかし、今はあなたがたの時、サタンが勝ち誇る時なのです。」ペテロの大失敗

54.  人々はイエスを捕らえ、大祭司の家に引っ立てました。 遠くから、ペテロが、恐る恐るあとをつけて行きました。 

55. 家の中庭では、兵士たちがたき火を囲んで暖まっています。 ペテロもその中にまぎれて座り込んでいました。

56.  そのうち、一人の女中が火のあかりでペテロに気づき、「この人、イエスといっしょだったわ!」と叫びました。

57.  「と、とんでもない! そんなやつは知らんよ!」ペテロはあわてて打ち消しました。

58.  しばらくすると、ほかの男が「いいや、おまえはやつらの仲間に違いない」と言い寄りました。 「違う、違う。 絶対そんなことはない!」ペテロはまた否定しました。

59.  一時間ほどたったでしょうか。 また別の男が、「おまえは確かにイエスの弟子だ。 その証拠に、二人ともガリラヤ人じゃないか」ときめつけました。

60.  ペテロは夢中で否定しました。 「何のことだい! さっぱりわからないぜ。」こう言うか言わないかのうちに、鶏の鳴き声が聞こえました。

61.  その瞬間、イエスはふり向き、ペテロを見つめられました。 ペテロは、はっと我に返りました。 「あすの朝、鶏が鳴くまでに三度、わたしを知らないと言うだろう」というイエスのことばを思い出したのです。 

62. ペテロは外へ走り出て、激しく泣きくずれました。

63-64. さて、見張りの警備員たちは、イエスをからかい始めました。 目隠しをしては、こぶしでなぐり、「おい、今なぐったのはだれだ。 さあ当ててみろよ、預言者様やーい」とはやし立てるなど、 

65. ありとあらゆる侮辱を加えました。

66.  翌朝、夜がしらじらと明けそめるころ、ユダヤの最高議会が開かれました。 祭司長をはじめ、国中の指導者たちがみな勢ぞろいしています。 そこへ、イエスは引き出されました。 

67-68. 尋問が始まりました。 「ほんとうに、おまえはメシヤ(救い主)か。 はっきりしろ。」「そうだと言ったところで、信じる気はもうとうないのでしょう。釈明させるつもりも。 

69. しかし、栄光のメシヤであるわたしが、全能の神の右の座につく時は、もうすぐです。」

70.  議場は騒然、尋問する声も荒立ってきました。 「なにーっ! あくまで神の子だと言いはるつもりかっ!」「そのとおりです。」イエスはお答えになりました。

71.  「これだけ聞けば十分だっ! こいつの口から確かに聞いたぞ。」議員たちは叫びました。イエス、死刑の判決を受ける