チャプター

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  11. 11
  12. 12
  13. 13
  14. 14
  15. 15
  16. 16
  17. 17
  18. 18
  19. 19
  20. 20
  21. 21
  22. 22
  23. 23
  24. 24

旧約聖書

新約聖書

ルカによる福音書 16 リビングバイブル (JLB)

1.  さてイエスは、弟子たちにも話をなさいました。「ある金持ちが計理士を雇いました。 ところが、この計理士はずる賢い男で数字をごまかしている、といううわさを聞きました。

2.  さっそく金持ちは彼を呼びつけ、きつく言い渡しました。 『帳簿をごまかしているそうだな。 もっぱらのうわさだぞ。 なんてことだ。 こうなった以上、やめてもらおう。 報告書を整理しておくんだな。』

3.  計理士は、はたと考え込みました。 『さて、どうしたものか。 首になるのは時間の問題だ。 日雇いをやるほどの力もないし、かといって、まさかこじきをするってわけにも……、だめだ、とてもプライドが許さない……。 

4. 待てよ。 そうだ、こうしよう。 これなら、首になっても大丈夫。 みんなが面倒を見てくれることまちがいなしだ。』

5.  どうしたかと言うと、彼は雇い主からお金を借りている人を一人一人呼び出して、話し合ったのです。 まず、最初の人とはこんなぐあいに。 『主人にいくら借りがありますか。』 

6. 『オリーブ油三千五百リットルです。』『そうですか。 えーと、これが証文ですね。 さあ破って、破って。 代わりに、その半分を借りたという証文を書くんですよ。』

7.  次の人にも同じように。 『あなたの借りはどのくらいですか。』『小麦三十トンです。』『いいでしょう。 これが証文……。 じゃあ、新しく二十五トンの証文を書いてください。 これと取り替えてあげるから。』

8.  この抜け目のなさには、さすがの金持ちも舌を巻き、うまいやり方だ、とほめないわけには、いきませんでした。 確かに、この世の人々のほうが、神を信じる者たちよりずっと抜け目がないのです。 

9. 不正の富を利用してでも、親しい友達をつくりなさい。 そうしておけば、富がなくなった時、親切にしてやった人たちが、永遠の天の住まいに迎え入れてくれるでしょう。 

10. 小さなことに忠実な人は、大きなことにも忠実です。 小さなことに不忠実な人は、大きな責任を与えられても、忠実に果たすことはできません。 

11. この世の富も任せられない人に、どうして、天にある、ほんとうの富を任せることができるでしょう。 

12. 他人の富に忠実でなかったら、あなたがたは自分の富さえ、任せてもらえないのです。

13.  だれも、二人の主人に仕えることはできません。 一方を憎んで他方に忠実であるか、あるいは、一方を重んじて他方は軽んじるようになるからです。 神とお金の両方に仕えることはできないのです。」

14.  何よりもお金に目のないパリサイ人たちは、当然のことながら、この話を聞いて、イエスをあざけりました。

15.  そんな彼らに、イエスは、おっしゃいました。 「あなたがたは、人前では、いかにも上品でうやうやしい態度をとっています。 しかし神は、あなたがたの悪い心をお見通しです。 いくら人の目をごまかし、賞賛を受けても、神には憎まれるのです。 

16. バプテスマのヨハネが現われて教えを説き始めるまでは、モーセの律法と預言者たちのことば(旧約聖書)が、あなたがたの指針でした。 しかしヨハネ以後は、神の国のすばらしい知らせが宣べ伝えられ、大ぜいの人がむりにでも入ろうと、押し合いへし合いしています。 

17. だからといって、おきてのどんな細かい部分も、効力を失ったというわけではありません。 たとい天地が滅びようと、神のおきてはびくともしないのです。

18.  だから、妻を離縁してほかの女と結婚する者は、姦通罪を犯すことになり、離縁された女と結婚する者も同罪なのです。」

19.  イエスは話を続けられました。「金持ちがいました。 きらびやかな服を着、ぜいたくざんまいの暮らしでした。 

20. ある日のこと、その家の門前に、ひどい病気にかかったラザロというこじきが横になっていました。 

21. 金持ちの家の食べ残りでもいい、とにかく食べ物にありつきたいと思っていたのです。 かわいそうに、犬までが、おできだらけのラザロの体をなめ回します。 

22. やがて、このこじきは死にました。 御使いたちに連れられて行ったのは、生前神を信じ、正しい生活を送った人たちのところでした。 そこで、アブラハムといっしょにいることになったのです。 そのうち、金持ちも死んで葬られましたが、 

23. 彼のたましいは地獄に落ちました。 苦しみあえぎながら、ふと目を上げると、はるかかなたに、アブラハムといっしょにいるラザロの姿が見えます。

24.  金持ちはあらんかぎりの声を張り上げました。 『アブラハム様ーっ! どうぞお助けを。 お、お願いでございまーす。 ラザロをよこし、水に浸した指先で、ほんのちょっとでも舌を冷やさせてください。 この炎の中では、もう苦しくて、苦しくてたまりません。』

25.  しかし、アブラハムは答えました。 『思い出してもみろ。 おまえは生きている間、ほしい物はなんでも手に入れ、思うままの生活をした。 だがラザロはどうだ。 全くの無一物だった。 それで今は反対に、ラザロは慰められ、おまえは苦しむのだ。 

26. それに、そちらへ行こうにも、間に大きな溝があって、とても行き来はできない。』

27.  『ああ、アブラハム様。 それならせめて、ラザロを私の父の家にやってください。 

28. まだ五人の兄弟がいるのです。 彼らだけは、こんな目に会わせたくありません。 どうぞ、この恐ろしい苦しみの場所があることを、教えてやってください。』

29.  『それは聖書が何度も警告してきたことではないかね。 その気があれば、いつでも読めるはずだよ。』

30.  金持ちはあきらめません。 『でも、アブラハム様。 彼は、聖書を読みたがらないのでございます。 ですが、もしだれかが死人の中から遣わされて行ったら、彼らも罪深い生活から立ち直れるでしょう。』

31.  アブラハムはきっぱり言いきりました。 『モーセと預言者たちのことばに耳を貸さないのなら、だれかが生き返って話したところで同じことだ。 彼らは聞こうとしないだろう。』」