チャプター

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  22. 22
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旧約聖書

新約聖書

列王紀下 5 リビングバイブル (JLB)

1.  シリヤの王は、軍の最高司令官ナアマンを非常に重んじていました。 ナアマンが軍隊を率いて、何度も輝かしい勝利を収めたからです。 彼は押しも押されもしない偉大な英雄でしたが、なんと、らい病にかかっていたのです! 

2. さて、シリヤ軍がイスラエルに侵入した時、捕虜の中に若い娘がいて、ナアマンの妻の小間使いになっていました。

3.  ある日、その少女が女主人に申しました。 「だんな様は、サマリヤにいる預言者のところへ行かれたらよろしいのに。 きっと、その方がらい病を治してくださいますわ。」

4.  ナアマンは、少女のことばを王に話しました。

5.  王は、「その預言者のところへ行くがよい。 イスラエルの王にあてて、紹介状を書こう」と言いました。そこでナアマンは、贈り物として、千八百万円相当の金と六百万円相当の銀、それに衣服五着を持って、イスラエルへ出発したのです。 

6. イスラエルの王への手紙には、こう書いてありました。 「この書状をあなたに手渡す男は、私の家来ナアマンです。 ぜひとも、ナアマンのらい病を治してください。」

7.  イスラエルの王は手紙を読むと、服を裂いて、こう言いました。 「シリヤの王め、らい病人をよこして、病気を治してくれと無理難題を吹きかけてきおった。 わしは殺したり、生かしたりできる神であろうか。 これは、イスラエル侵略の口実を見つける罠に違いない。」

8.  預言者エリシャは、イスラエルの王が苦境に立たされていることを知り、人をやって、次のように言わせました。 「なぜ、そんなに取り乱しているのですか。 ナアマンをお寄こしください。 イスラエルには神の預言者がいることを教えてやりましょう。」

9.  ナアマンは馬と戦車を従えて、エリシャの家の玄関に立ちました。 

10. エリシャは使いをとおして、次のように言いました。 「ヨルダン川へ行って、体を七回洗いなさい。 そうすれば、らい病は完全に治り、跡形もなくなります。」 

11. これを聞いたナアマンは、ひどく腹を立て、不きげんそうに引き返しました。「何てことだ! 預言者がじきじきに出て来てあいさつし、患部に手をあて、彼の神の名を呼んで、らい病を治してくれると思っていたのに。 

12. 川で洗えだと? それなら、ダマスコのアマナ川やパルパル川のほうが、よっぽどきれいじゃないか。 どうしても川でなきゃというんなら、故郷の川でやったほうがまだましだ。」 彼はぷりぷり怒って帰って行きました。

13.  ところが、部下がこう説き伏せたのです。 「あの預言者に、何か難しいことをせよと言われても、そうなさるおつもりだったのでしょう。 それなら、体を洗って、きよくなれと言われただけのことですから、そのとおりになさったらいかがですか。」

14.  それももっともです。 ナアマンはヨルダン川へ下って行き、言われたとおり、七回、水につかりました。 すると、どうでしょう。皮膚は幼子のようにつやつやし、すっかり治ったではありませんか! 

15. 一行は預言者のところへ引き返し、うやうやしく彼の前に立ちました。 ナアマンは感謝でいっぱいです。 「今こそ、イスラエルのほかに、世界のどこにも、神様がおられないことがわかりました。 どうぞ、この贈り物をお受けください。」

16.  「私の神様にかけて、そんな物をいただくわけにはまいりません。」ナアマンはしきりに勧めたのですが、エリシャはどうしても受け取りません。 

17. しかたなく、ナアマンは言いました。 「では、これだけはお聞き届け願えないでしょうか。 どうぞ、二頭のらばに載せられるだけの土を分けてください。 国へ持ち帰りたいのです。これからはもう、イスラエルの神様のほかには、どの神にもいけにえをささげたくありません。 

18. ただし、一つだけ、お許しいただきたいことがあります。 私の主君が、リモンの神殿に参拝する時、私の腕に寄りかかります。 その時、私もいっしょに体をかがめますが、そのことを神様がお許しくださいますように。」

19.  「よろしい。 安心してお帰りなされ」というエリシャの返事を聞いて、ナアマンは帰って行きました。

20.  ところが、エリシャのしもべゲハジは、ひそかに考えたのです。 「だんな様のお人好しにも困ったものだ。 贈り物を一つも受け取らずに、あの方を帰してしまうんだから。 よーし、あの方のあとを追いかけ、何かいただいて来よう。」

21.  ゲハジはナアマンのあとを追いました。 ナアマンはゲハジが走って来るのを見ると、戦車から飛び降り、走り寄って迎えました。「何かあったのですか。」

22.  「はい。 主人がお伝えしたいことがあると、私を使いに出したのでございます。 たった今、若い預言者が二人、エフライムの山地から来まして、彼らに何かみやげをと思ったものですから。 よろしければ、六十万円分の銀と衣服二着を分けていただけませんか。」

23.  「よろしいですとも。 なんなら、いっそ百二十万円分の銀をお持ちください。」 ナアマンは強く勧め、高価な衣服二着と銀貨二袋を二人の家来に持たせ、ゲハジといっしょに行かせました。 

24. エリシャの家のある丘まで来ると、ゲハジは衣服と銀貨の袋を受け取り、二人を帰しました。 受け取ったものを隠しておこうというのです。 

25.  何くわぬ顔で主人の前に出たゲハジに、エリシャは尋ねました。 「ゲハジ、どこへ行っていた。」「別に、どこへもまいりませんが。」

26.  「ナアマンが戦車から降りて、おまえを迎えるのを、わしは心の目で見ていたのだ。 今は、金や衣服、オリーブ畑やぶどう畑、羊や牛、下男や下女を受け取る時だろうか。 

27. そんなことをしたからには、ナアマンのらい病は、いつまでも、おまえとおまえの子孫に降りかかるぞ。」ゲハジはたちまちらい病にかかり、肌が雪のように白くなって、エリシャの部屋から出て行きました。