チャプター

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  2. 2
  3. 3
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  10. 10
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  18. 18
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  21. 21

旧約聖書

新約聖書

士師記 6 リビングバイブル (JLB)

1.  やがてイスラエル国民は、またもや、ほかの神々を拝み始めました。 それで神様は、敵を起こして懲らしめようとなさったのです。この時は、ミデヤン人に七年間くるしめられることになりました。 

2. ミデヤン人はとても残忍だったので、イスラエル人は山に難を避け、洞窟やほら穴に身を隠しました。 

3-4. イスラエル人が種をまくと、ミデヤン人やアマレク人をはじめ、近隣の国から略奪者が来て、農作物を荒らし、ガザに至るまで各地を荒らし回り、食糧をぜんぶ奪ってしまうのです。 羊、牛、ろばもいなくなりました。 

5. 敵の大軍は、おびただしい数のらくだの群れを連れて来て、その地を荒らし尽くすまで動こうとしないのです。 

6-7. イスラエルは、ミデヤン人のために丸裸にされてしまいました。 ついに、たまりかねた人々は、またも神様に、助けてくださいと叫んだのです。

8.  神様は、一人の預言者を遣わし、その口をとおしてお答えになりました。 「イスラエルの神様は、あなたがたをエジプトでの奴隷生活から救い出してくださった。 

9. また、エジプト人およびいっさいの残忍な者たちの手から助け出し、敵を一掃して、この地を与えてくださったのだ。 

10. その神様が、『わたしは、おまえたちの神である主だ。 よいか、ぐるりを取り囲むエモリ人の神々を拝んではならぬぞ』とお命じになったではないか。 それなのに、あなたがたは聞き従わなかった。」

11.  ある日、神様の使いが現われ、アビエゼル人ヨアシュの農地内にある、オフラの樫の木の下に座っていました。 ヨアシュの息子ギデオンは、酒ぶね〔ぶどうを絞ってぶどう酒をつくる穴〕の底で、小麦を打っていました。 ミデヤン人から身を隠していたのです。

12.  御使いはギデオンの前に立ち、「勇士よ、神様はおまえと共におられる」と告げました。

13.  ギデオンは答えました。 「初めてお目にかかりますね……。 どうか教えてくれませんか。 神様が共におられるのなら、なぜ、こんなことが次から次へと起こるんですか。 ご先祖から聞かされましたよ。 神様がエジプトから連れ出してくださる時、ものすごい奇蹟をいっぱい行なわれたとね。 なのに、今はどうです。 そんな奇蹟のかけらもないじゃありませんか。 もう神様は私たちを見捨てて、ミデヤン人にしたい放題をさせ、踏みつけるに任されるんだ。」

14.  すると神様は、ギデオンに向き直って命じました。 「わたしがおまえを強くしよう。 行け、イスラエルをミデヤン人から救い出すのだ。 わたしがおまえを遣わすのだ。」

15.  「神様、めっそうもありません。 イスラエルを救うなんて、とてもできっこありません。 私の家は、マナセ部族の中でもいちばん貧乏だし、それに私は、家でいちばん年下なんです。」

16.  「よいか。 神であるわたしがついているんだ。 だからおまえは、たちどころにミデヤンの大軍を打ち破れる。」

17.  「もしそれがほんとうなら、その証拠に奇蹟を見せてください。 いま語りかけてくださっているあなたが本当の神様であると、証明してほしいんです。 

18. ちょっと待っていてくださいませんか。 贈り物を差し上げたいので……。」「よかろう。 おまえが戻るまで待っていよう。」

19.  ギデオンは大急ぎで家に駆け込み、子やぎを一匹焼き上げ、三十六リットルの粉でイースト菌抜きのパンをこしらえました。 次いで肉をかごに詰め、スープをなべに入れて、樫の木の下にいる御使いのところへ運んで来て、差し出しました。

20.  御使いはギデオンに命じました。 「肉とパンをあそこの岩の上に置いて、スープをかけてみなさい。」言われたとおりにすると、 

21. 御使いは手にしていた杖で、肉とパンにさわりました。 するとどうでしょう。 たちまち岩から火が燃え上がり、肉とパンを焼き尽くしてしまったではありませんか! その瞬間、御使いの姿は見えなくなりました。

22.  ギデオンは、ほんとうに神様の使いであったと知って、思わず叫びました。 「ああ、神様! 面と向かって御使いを見てしまいました。」

23.  「大丈夫だ、心配しなくていい。 死にはしない。」 神様はきっぱりお答えになりました。

24.  ギデオンはそこに祭壇を築き、「主との平和の祭壇」と名づけました。 この祭壇は今も、アビエゼル人の地、オフラにあります。 

25. その夜、神様はギデオンに命じて、父親のいちばん上等の雄牛を、父親のものであるバアルの祭壇のところへ引いて行かせ、祭壇を引き倒させた上、そばの女神アシェラの木像をも切り倒させました。

26.  「さあ、わたしのために、祭壇を築き直せ。 その高い所に注意深く石を積むのだ。 次に、さっきの雄牛を完全に焼き尽くすいけにえとして祭壇にささげ、こわした木像をくべて火をたけ。」

27.  そこでギデオンは、十人の使用人を駆り出して、命じられたとおりにしました。 ただ、家族や町の人々の目をはばかって、夜中に断行したのです。 もし見つかれば、どんな目に会うかわかっていたからです。 

28. 翌朝はやく、町がにぎわい始めるころ、だれかが、バアルの祭壇が取り払われ、そばのアシェラの偶像もこわされて、代わりに新しい祭壇が築かれ、雄牛のいけにえがささげられているのを見つけました。

29.  「いったい、どこのどいつがやったんだ。」 人々は調べ回り、ついに、ヨアシュの息子ギデオンのしわざだと突き止めました。

30.  人々はヨアシュをどなりつけました。 「息子を出せ! あんなやつは殺してしまえ! よくもバアル様の祭壇をめちゃめちゃにして、おまけにアシェラ様の像までこわしてくれたな。」

31.  しかしヨアシュも、たけり狂う人々を前にして、負けてはいません。 「バアル様もなんだな。 おまえさんたちに助けてもらわなきゃならんのかい。 なんとだらしのない神様だ。 おまえさんたちはこんな情けないバアル様のために、いのちを投げ出そうってわけかね。もしほんとうの神様ならな、ご自分の祭壇をこわしたやつなんぞ、さっさとやっつけておしまいになればいいじゃないか。」

32.  この時からギデオンは、「エルバアル」とあだ名されるようになりました。 「バアルは自分の面倒ぐらい見るがよい」という意味です。

33.  それからしばらくして、ミデヤン人、アマレク人、その他の近隣諸国は、連合してイスラエルに対抗しようと兵をあげました。 その軍勢はヨルダン川を渡り、イズレエルの谷に陣を敷いたのです。 

34. すると、神の霊がギデオンをとらえたので、ギデオンが召集ラッパを吹き鳴らすと、アビエゼルの男どもが結集しました。 

35. マナセ、アシェル、ゼブルン、ナフタリにも使者を送り、戦士を募ると、どこもかしこもみな応じてくれました。

36.  ギデオンは神様に願い出ました。 「お約束どおり、イスラエルを救うために私を立ててくださるおつもりなら、 

37. 証拠を見せていただきたいのです。 今夜、打ち場に羊の毛を置いておきます。 もし明日の朝、羊の毛だけが露でしめり、土がかわいているなら、神様がついていてくださるんだと確信できるんですが。」

38.  すると、そのとおりのことが起こったのです。 明くる朝はやく起きて羊の毛をしぼると、鉢いっぱいの水がしたたり落ちたのです。

39.  ギデオンはまた神様に申し上げました。 「どうか、お怒りにならないでください。 もう一度だけ試させていただきたいのです。 今度は反対に、羊の毛だけをかわかして、地面全体をしめらせてください。」

40.  神様はギデオンの願いどおりにしてくださいました。 その夜、羊の毛はかわいたままで、地面は露でおおわれたのです。