チャプター

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  18. 18
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  21. 21

旧約聖書

新約聖書

士師記 16 リビングバイブル (JLB)

1.  ある日、サムソンはペリシテ人の町ガザへ行き、一人の娼婦と夜を過ごしました。 

2. たちまち、「サムソンを見かけた」という噂が広まり、警備体制が敷かれました。 町の人も大ぜい、彼の帰りぎわを押さえようと、町の門で夜通し待ち伏せました。「明け方になったら、見つけ出して殺してしまおう」と思っていたのです。

3.  真夜中まで女と過ごしたサムソンは、そのあと町の門まで行き、門を二本の門柱もろとも引き抜くと、高々とかつぎ上げ、ヘブロンの向こう側にある山のいただきまで運んで行ったのです。

4.  そののちサムソンは、ソレクの谷に住むデリラという女を愛するようになりました。 

5. ペリシテ人の五人の領主がじきじき彼女を訪ね、「サムソンの力の秘密を探ってくれないか。 どうしたら、あいつを鎖で縛り上げてやれるか、ぜひとも知りたいのだ」と頼みました。それも、ただではありません。 「この仕事を引き受けてくれたら、めいめいが三十万円ずつ出そう」と約束したのです。

6.  デリラはサムソンに、力の秘密を打ち明けてほしいと頼みました。「ねえサムソン、どうしてそんなに強いの。 教えてちょうだい。 あんたを捕まえるなんて、できっこないわね。」

7.  「そうだな。 真新しい七本の弓弦で縛られでもすれば、おれも人並の力しか出せまいな。」

8.  例の領主たちは、さっそく七本の弓弦を持って来ました。 デリラは眠っているサムソンを縛り上げ、 

9. 隣室には幾人かを潜ませておいて、大声で叫んだのです。「サムソン! ペリシテ人が来たわ!」するとどうでしょう。 サムソンは、弓弦を木綿糸のように断ち切ってしまったのです。 こうして彼の力の秘密は、だれにも知られずじまいでした。

10.  するとまた、デリラはサムソンにからみました。 「あたしをからかったのね。 うそつき。 ねえ、どうしたらあんたを縛り上げることができるのか、教えてちょうだい。」

11.  「わかったよ。 まだ使ったことのない新しい綱で縛ってみろ。普通の人と同じぐらいの力しか出せないよ。」

12.  それでデリラは、サムソンが眠ったころを見はからって新しい綱を取り出し、縛り上げました。 前と同じように隣室に幾人かを潜ませ、またも大声で叫んだのです。「サムソン! ペリシテ人が捕まえに来たわ!」ところがサムソンは、まるでくもの巣でも払うように、綱を腕からはずしてしまったではありませんか。

13.  「また、あたしをばかにして、とんでもないでたらめをおっしゃったのね。 ねえ、お願い。 ほんとうのことを教えて。 どうしたらあんたを縛り上げることができるのよ。」「ああ、わかったよ。 おれの髪をおまえの機に織り込んでみるんだな……。」

14.  デリラはサムソンが眠ったのを確かめ、言われたとおり、彼の髪の毛を機に織り込み、悲鳴をあげてみせました。 「ペリシテ人よ!サムソン!」 サムソンは目を覚ますと、髪をぐいと引っぱり、機をこわしてしまいました。

15.  デリラは泣き出しそうな声で言いました。 「よくも、愛してるなんておっしゃれるわね。 ちっとも私を信用してくださらないくせに。 もう三度もだまされたわ。 それでもまだ、力の秘密を教えてはくださらないのね。」

16-17. 寝ても覚めてもせがみ続けるので、うるさくてたまりません。 サムソンはついに秘密を打ち明けました。「実はな、おれの頭にはかみそりが当てられたことがないんだよ。おれは、生まれる前から神様にささげられたナジル人だからな。 もし髪がそり落とされたら、おれの力もおしまいさ。 ほかの人と同じになるよ。」

18.  ついにほんとうのことを白状させたのです。 デリラはさっそく、ペリシテ人の五人の領主を呼びにやりました。「もう一度お越しください。 今度こそまちがいありませんわ。」彼らは約束の金を用意してやって来ました。 

19. 彼女はひざ枕でサムソンを眠らせると、床屋を呼び、髪をそり落とさせました。 念のためサムソンをこづいてみると、確かに彼の力はなくなっているようです。

20.  もう大丈夫と、悲鳴をあげました。 「ペリシテ人が捕まえに来たわ! サムソン!」 サムソンは目を覚まし、「なあに、いつもの調子で片づけよう。 一ゆすりすりゃ、思いのままさ」と考えました。神様が自分から去られたことに、気づいていなかったのです。 

21. ペリシテ人は彼を捕まえると、目をえぐり出し、ガザへ連れて行きました。 そこで青銅の足かせをはめて牢に入れ、臼を引かせたのです。

22. しかしその間にも、サムソンの髪は少しずつ伸びていました。

23-24. ペリシテ人の領主たちは、サムソン逮捕を祝う盛大な祭りを催しました。 人々は彼らの神ダゴンにいけにえをささげ、熱狂的に賛美しました。獄中のサムソンを満足げに眺めながら、「われわれの神様は、宿敵サムソンを引き渡してくださった。 わしらの同胞を大ぜい殺した元凶が、今はあのざまだ」と叫びました。 

25-26. いいかげん酔いが回ったころです。 「サムソンを連れ出せ! 見せ物にして楽しもうじゃないか」という声があがったのです。サムソンは牢から連れ出され、神殿の中央の大屋根を支える二本の柱の間に立たされました。 サムソンは手を引いている若者に頼みました。 「両手を二本の柱にすがらせてくれ。 寄りかかって休みたいんだ。」

27.  この時、神殿は立錐の余地もないほど、人で埋め尽くされていました。 五人の領主も臨席しており、バルコニーにも三千人の男女がひしめいて、サムソンの様子をおもしろ半分に見守っていたのです。

28.  サムソンは神様に祈りました。 「ああ、神様、どうかもう一度、私のことを思い出してください。 いま一度、力をお与えください。えぐられた二つの目のためにも、報復させてください。」

29.  祈り終わると、全力を振り絞って柱を押しました。

30.  最後に彼は、「ペリシテ人もろとも死なせてください」と祈りました。すると神殿は、領主たちをはじめ、居合わせた全員の上にくずれ落ちたのです。 なんと、サムソンが死ぬ時に殺した者の数は、生きている間に殺した数より多かったのです。 

31. その後、サムソンの兄弟や身内が来て遺体を引き取り、郷里に運んで、ツォルアとエシュタオルとの間にある、父マノアの墓に葬りました。 サムソンがイスラエルをさばいたのは二十年間でした。