1. ある日のこと、レビの曾孫で、ケハテの孫にあたる、イツハルの息子コラは、ルベン部族のエリアブの息子ダタンとアビラム、それにペレテの息子オンとともに、
2. 人々をそそのかし、モーセに逆らわせました。 なんとその仲間には、だれもがよく知っている二百五十人の指導者もいたのです。
3. 彼らは、モーセとアロンのところに来て、文句を並べ立てました。「でしゃばるのもいいかげんにしてほしい。 お二人の説教はもうたくさんだ。 たいした人物でもないくせに。 おれたちだって、神様に選ばれた者じゃないか。 神様はおれたちみんなの神様だ。 お二人だけが特別に偉いのだろうか。 そんなに威張りくさる権利がどこにあるんだっ。」
4. これを聞くと、モーセは地にひれ伏しました。
5. それから、コラとその仲間にきっぱり言いました。 「あしたの朝、神様は、だれが神様の選んだ正しい指導者か、だれが聖く、だれが祭司かを、はっきりさせてくださる。
6-7. あした香炉を持って来て、神様にささげる香をたけ。 そうすれば、神様がだれをお選びになったかわかるはずだ。 おまえたちはレビ部族だが、おまえたちこそでしゃばりだっ。」
8-9. さらに、モーセはコラに言いました。 「神様がおまえを特別に選び、おそばで天幕の仕事をさせ、人々の前で奉仕させてくださるだけでは、不足なのか。
10. この仕事ができるのはレビ部族だけだというのに、それでも不満なのか。 だから、祭司になりたいのだろうな。
11-12. そうだ、祭司になりたいばかりに、神様に背いているのだ。 アロンに不平ばかり並べるが、いったい彼が何をしたというのだ。」 モーセは続けて、エリアブの息子ダタンとアビラムを呼びつけましたが、二人は来ようともしません。
13. そのうえ、モーセの口まねをして言い返したのです。 「あんたこそ、美しいエジプトからおれたちを連れ出して、こんなひどい荒野でのたれ死にさせるだけじゃ、不足なんですかい。 それだけじゃ不満で、王様にでもなろうというんですかい。 とんでもないこった。
14. あんたは約束の国とかいうけっこうな所に、ちっとも連れてってくれないじゃないか。 畑やぶどう畑をくれるって? 笑わせるな。 もうだまされないぞ。 来いと言ったって行くもんかっ!」
15. モーセはかんかんになり、神様にお願いしました。 「あの連中のいけにえをつっ返してやってください。 これまで、ろば一頭とり上げたこともなく、彼らを傷つけたこともないのに、あんないいがかりをつけているのです。」
16. それから、コラに言いました。 「あした、仲間全員と神様の前に来い。 アロンも来る。
17. 香を入れた香炉を忘れるな。 一人一個ずつ、二百五十個用意するのだ。 アロンも自分のを持って来る。」
18. 彼らはそのとおりにしました。 香炉を持ち、火をつけ、モーセとアロンといっしょに、神様の天幕の入口に立ちました。
19. 事の成り行きを見届けようと、全国民が集まっています。 コラは彼らをけしかけ、モーセとアロンに逆らわせようとしました。 と、その時です。 さっとあたりが明るくなり、
20. 神様の声が響きました。
21. 「モーセとアロン、この連中から離れろ。 わたしは今すぐ彼らを滅ぼす。」
22. しかしモーセとアロンは、神様の前にひれ伏して願いました。 「ああ、神様。 世界にただ一人の神様。 たった一人の罪のために、すべての人を罰するのですか。」
23-24. すると神様は、モーセに答えました。 「わかった。 それなら、人々にコラとダタンとアビラムのテントから離れるように言え。」
25. モーセはダタンとアビラムのテントに走って行きました。 二百五十人の指導者もいっしょです。
26. モーセは叫びました。 「急いでそのテントを離れろ。 連中の持ち物にさわるな。 さもないと、仲間ということで殺されてしまうぞ。」
27. 驚いた人々は、コラとダタンとアビラムのテントから離れました。ダタンとアビラムは、妻や子供たちを連れてテントを出、入口に立ちました。
28. モーセは宣言します。 「これから起こることを見れば、神様が私を遣わされたことが、はっきりわかるだろう。 私はこれまで、自分の考えでやってきたのではない。
29. いいか、もしこの者たちがありきたりの事故や病気で死んだら、うそをついたのは私のほうだ。
30. しかし、神様が奇蹟を起こして地面を裂き、彼らをテントもろとものみ込み、生きたまま地獄に落とされたら、神様を冒涜したのは、彼らのほうだ。」
31. こう言い終わるか終わらないうちに、なんとコラたちの足もとの地面がぱっくり裂け、
32. いっしょにいた家族、友人を、テントもろとも、のみ込んでしまったではありませんか。
33. 彼らは一人残らず、生きたまま地獄に落ち、地の底に閉じ込められたのです。
34. 人々はみな、彼らの苦しみ叫ぶ声を聞いて、もしかしたら自分たちも……と心配になり、あちこち逃げ惑いました。
35. その時、天から火が下り、香をささげていた二百五十人を焼き殺しました。
36-37. 神様はモーセに命じました。 「祭司アロンの息子エルアザルに、香炉を火の中から取り出させなさい。 その香炉はわたしにささげられた神聖なものだからだ。
38. また、罪を犯して死んだ者たちの香炉から、火のついた香を取り出してまき散らすように言いなさい。 次に香炉を打ちたたいて一枚の板に延ばし、それで祭壇をおおいなさい。この香炉は、わたしの前で使ったから神聖なのだ。 こうしておけば、祭壇のおおいを見るたびに、このいやな出来事を思い出すだろう。」
39. 祭司エルアザルは、命じられたとおり二百五十個の青銅の香炉で、祭壇におおいをかけました。
40. アロンの子孫でない者はだれも、神様の前で香をたいてはならないこと、これを破ればコラと同じ目を見ることを、思い出させるためでした。 すべて神様がモーセに命じたとおりです。
41. ところが、翌朝になると、もう人々はみな、モーセとアロンに不平を言いだす始末です。 「あんたたちは神様の国民を殺してしまったんだぞ。」
42. 不平のうずはたちまち広がり、険悪なふんい気になってきました。と、突然、雲がわき起こり、人々が振り返って神の天幕を見ると、どうでしょう。 目もくらむばかりに輝いています。
43-44. モーセとアロンが天幕の入口に立つと、神様はモーセに命じました。
45. 「人々から離れろ。 今すぐ彼らを滅ぼす。」 それを聞いて、モーセとアロンは神様の前にひれ伏しました。
46. モーセはアロンに言いました。 「急いで香炉を持って来て、祭壇の火で香をたき、すぐ人々のところへ行って、神様のお赦しを願ってくれ。 早くしないと手遅れになる。 見ろ。 もう罰があたって病気で倒れた者もいるぞ。」
47. アロンは言われたとおり、人々のところへ走って行きました。 すでに伝染病がはやりだしていたので、急いで香をたき、神様の赦しを願いました。
48. アロンが死者と生きている者の間に立っていると、やっと伝染病はおさまりましたが、
49. 死者はすでに一万四千七百人にも達していたのです。 前日のコラの事件で死んだ者は別です。
50. 伝染病がおさまると、アロンは神の天幕の入口にいたモーセのところへ戻りました。