8-9. 兄たちはまだ気づきません。 ヨセフはふっと少年時代の夢を思い出し、荒々しく問い詰めました。 「おまえたちはスパイに違いない。 わが国がききんでどんなに苦しんでいるか、調べに来たのだろう。」
10. 「とんでもございません。 ほんとうに食糧を買いにまいっただけでございます。
11. 私どもはみな兄弟で、まっとうな人間です。スパイだなんてめっそうもありません。」
12. 「いーや、スパイだ。 そうに決まっている。 われわれがどのくらい弱ったか見に来たのだ。」
13. 「恐れながら申し上げます。 私どもは十二人兄弟で、父親はカナンの地におります。 末の弟は父のところに残りました。 もう一人は死んでしまいましたが……。」
14. 「それがどうしたっ! 何の関係もないではないか。 やはりスパイに違いない。
15. もしおまえたちの言うとおりなら、その末の弟を連れて来い。 それまではエジプトから一歩たりとも出ることは許さん。
16. だれか一人が出かけて、弟を連れて来い。 あとの者は全員、牢の中で待つがいい。 そうすれば、おまえたちの申し立てがほんとうかどうかわかる。 もし弟がいなければ、おまえたちは間違いなくスパイだ。」
17. ヨセフは一同を三日のあいだ牢に入れておきました。