16. だれか一人が出かけて、弟を連れて来い。 あとの者は全員、牢の中で待つがいい。 そうすれば、おまえたちの申し立てがほんとうかどうかわかる。 もし弟がいなければ、おまえたちは間違いなくスパイだ。」
17. ヨセフは一同を三日のあいだ牢に入れておきました。
18. 三日目にヨセフは言いました。 「私は神様を恐れる人間だ。 もしおまえたちが潔白なら、それを証明する機会を与えてやろう。
19. 一応おまえたちの申し立てを信じる。 一人だけここに残れば、あとの者は穀物を持って帰ってよい。
20. ただし、末の弟を連れて来るのだ。 おまえたちが正直かどうか、確かめなければならないからな。 うそでないとわかれば、いのちは助けよう。」 一同は言われたとおりにすることにしました。
21. 彼らは互いに言いました。 「昔、ヨセフにひどいことをしたからなあ。 こんなことになったのも、罰があたったんだ。 あいつはこわがって必死で助けを求めたっけなあ。 なのにおれたちは、まるで知らん顔をして、耳を貸そうともしなかった。」
22. ルベンが口を開きました。 「だからやめろと言ったんだ。 それをおまえたちときたら、てんで聞こうともしなかった。 おかげで今は、自分が死ぬはめになったというわけだ。」
23. もちろん彼らは、そばに立っているエジプトの総理大臣がヨセフで、話がつつ抜けになっているとは夢にも思いません。 それまで通訳つきで話をしていたからです。
24. ヨセフはとてもいたたまれません。 部屋を出て一人きりになれる場所を捜し、そこで泣きました。 ひとしきり泣くと、また戻り、シメオンを選んで、みんなの見ている前で縛り上げました。
25. それから召使たちに、一同の袋に穀物をいっぱい詰めさせ、支払った代金を袋の口のところにこっそり戻しておくよう指示しました。 そのうえ旅行に必要な食糧までとりそろえさせたのです。