18. ヤコブは内心びくびくしながら、皿を持って父親の寝室に入りました。「お父さん。」「何だね。 その声はエサウかい? それともヤコブかい?」
19. 「長男のエサウですよ。 お父さんのおっしゃるとおりにしました。 ほら、お父さんが食べたがってたおいしい鹿の肉ですよ。 床の上に座って食べてください。 そのあとで、ぼくを祝福してください。」
20. 「そりゃあまた、ずいぶん早く鹿をつかまえたもんだな。」「ええ、神様がすぐ見つかるようにしてくださったんですよ。」
21. 「それはそうと、ちょっとこっちへおいで。 ほんとうにエサウかどうか、さわって確かめるからな。」
22. そばへ行ったヤコブを、イサクは手でなで回しながら、ひとり言のようにつぶやきます。「声はヤコブそっくりだが、この手はどう考えてもエサウの手だ。」
23. まんまと計略にひっかかりました。 もう祝福はこっちのものです。
24. 「おまえ、ほんとうにエサウかい?」「ええ、もちろんですとも。」
25. 「じゃあ鹿の肉を持っておいで。 それを食べて、心からおまえを祝福しよう。」ヤコブが料理を持って来ると、イサクは喜んで食べ、いっしょに持って来たぶどう酒も飲みます。