34. 「実は、私の主人はアブラハムと申しまして、
35. 神様に特別目をかけていただいております。 土地の人々からも大いに尊敬される立派な人です。 家畜も多く、金銀をはじめ、ばく大な財産もあります。 奴隷も大ぜいかかえ、らくだやろばもたくさんいます。
36. 奥様は大へん年をとってからお子さんに恵まれまして、主人は全財産をこの息子さんに譲りました。
37. ところで、主人が申しますには、そのイサク様を土地の女と結婚させてはならない、というのでございます。
38. どうしてもこの遠い国まで来て、ご兄弟の家族の中から花嫁を連れ帰れと、それはもう、きびしいご命令で……。
39. 私は万一の時を考えまして、『もしいっしょに来るという娘さんが見つからなかったらどういたしましょう』と尋ねました。
40. すると主人は、そんな心配はいらない、と申します。 『いや、必ず見つかる。 これまでわしは神様のおこころに背いたことはない。 大丈夫、神様が御使いを遣わして、必ずうまくいくようにしてくださる。 だから、わしの親類から嫁を見つけて来い。
41. 必ずそうすると誓ってもらうぞ。 それでも万一、娘さんをこんな遠くにはよこせない、と断わられたら、その時はしかたがない。 そのまま帰って来てもいい』とまあ、そう申すのでございます。