18-20. 「どうぞ、そんなことになりませんように。 これほどまでして、いのちを助けてくださるご親切には、お礼の申しようもございません。 そのついでと言っては何ですが、山の中ではなく、あそこに見える、小さな村に逃げ込んではいけないでしょうか。 山の中では、どんな危険な目に会うかわかりません。 けれども、あの村ならそんなに遠くないし……、それにほんの小さな村ではありませんか。 お願いです。 あそこへ行かせてください。 どんなに小さい村か、見ておわかりでしょう。 あそこなら、私どもも助かります。」
21. 「よろしい。 言うとおりにしてあげましょう。 あの小さな村は滅ぼさないことにします。
22. だが急ぐのですよ。 急がなければだめですよ。 あなたが向こうに着くまで、私は何もしないから。」この時から、その村はツォアルと呼ばれるようになりました。 「小さな村」という意味です。
23. ロトが村に着くと、ちょうど太陽がのぼったところでした。
24. その時、天から、火と燃えるタールが、ソドムとゴモラの上に雨あられと降りかかりました。
25. そして、平野に点在するほかの町や村といっしょに、ソドムとゴモラをすっかり焼き尽くしてしまったのです。 人間も植物も動物も、いのちあるものはみな死に絶えました。
26. ロトの妻も、夫のあとからついて行ったのですが、警告に背いてうしろを振り返ったので、塩の柱になってしまいました。
27. その日、アブラハムは早く起きて、神様と話をした場所に急ぎました。
28. ソドムとゴモラのあった平野を見渡すと、まるでかまどのように熱気がたちこめ、煙の柱が町のあちこちに立っているのが見えます。
29. しかし神様は、アブラハムの願いを聞き入れ、ロトのいのちを救ってくださいました。 町をおおい尽くした死の災いから、彼を救い出してくださったのです。
30. のちにロトはツォアルの人々を恐れて山へ逃げ、二人の娘といっしょにほら穴で暮らしました。
31. そんなある日、姉が妹に言いました。 「このあたりには男の人がいないし、お父さんも私たちを結婚させることなんかできないわ。 それにお父さんだってすぐ年をとって、子供をつくれなくなってしまうのよ。
32. だから、お父さんをぶどう酒で酔いつぶして、いっしょに寝ましょうよ。 うちの家系が絶えないようにするには、そうするしかないわ。」