チャプター

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  21. 21
  22. 22

旧約聖書

新約聖書

列王紀上 22 リビングバイブル (JLB)

1.  三年の間、シリヤとイスラエルの間には戦争がありませんでした。 

2. しかし、三年目になって、ユダ王国のヨシャパテ王がイスラエル王国のアハブ王を訪れた時、 

3. アハブ王は家来にこう言いました。「シリヤが、われわれの町ラモテ・ギルアデを今でも占領しているのを知っているか。 それなのに、われわれは何もせず、手をこまぬいているだけだ。」

4.  それから、ヨシャパテ王に向かって、「ラモテ・ギルアデを取り返すために、援軍を送ってくださいませんか」と頼みました。「いいですとも! あなたとは兄弟の仲です。 国民も、馬も、ご自由にお使いください。 

5. それにしても、まず神様におうかがいを立ててみようじゃありませんか。」

6.  そこでアハブ王は、四百人の異教の預言者を召集し、「ラモテ・ギルアデに攻め入るべきか、それともやめるべきか」と尋ねました。彼らは異口同音に、「攻め上りなさい。 神様が陛下を助けて、ラモテ・ギルアデを占領させてくださいます」と答えました。

7.  ところが、ヨシャパテ王は満足しません。 「ここには神の預言者がいないのですか。 神の預言者にも聞いてみたいのです。」

8.  「一人だけ、いるにはいますがね、どうも、虫が好かんやつでしてな。 なにしろ、いつも陰気くさいことばかり言って、良いことはちっとも預言しないときている。 イムラの子でミカヤといいますがね。」「まあまあ、そんなこと言わずに……。」

9.  そこでアハブ王も気を取り直し、側近を呼んで、「急いで、ミカヤを連れて来い」と言いつけました。

10.  その間にも、預言者が二人の王の前で次々と預言していました。 二人は王服をまとい、町の門に近い打穀場の、急ごしらえの王座についていました。 

11. ケナアナの子で預言者の一人ゼデキヤは、鉄の角を作って言いました。 「この鉄の角でシリヤ軍を押しまくり、ついに全滅させることができると、神様は約束しておられます。」

12.  ほかの預言者も、みな右へならえをして言いました。 「さあ、ラモテ・ギルアデに攻め上りなさい。 神様が勝利を与えてくださいます!」

13.  ミカヤを呼びに行った使者は、ほかの預言者のことばを告げて、同じように語れとうながしました。

14.  しかしミカヤは、「約束できるのは、神様がお告げになることだけを語る、ということだ」と、きっぱり断わりました。

15.  ミカヤが姿を現わすと、王はさっそく尋ねました。 「ミカヤ、ラモテ・ギルアデに攻め入るべきか、それともやめるべきか。」「もちろん、攻め上りなさい! 大勝利はまちがいありません。 神様が勝利を与えてくださるからです。」

16.  「神様が言われたことだけを語れと、何度言えばわかるのだ。」

17.  「実は、私はイスラエル国民が、羊飼いのいない羊のように山々に散らされているのを、幻で見ました。 神様はこうお語りになりました。 『王は死んだ。 彼らを家へ帰らせるように。』」

18.  「どうです、お話ししたとおりでしょう。 いつも悪いことばかり言って、良いことはこれっぽっちも話しませんよ。」 アハブ王はヨシャパテ王に不満をぶちまけました。

19.  すると、ミカヤが先を続けました。 「神様のおことばをもっと聞きなさい。 私は、神様が王座につき、天の軍勢がその回りに立っているのを見ました。

20.  そのとき神様は、『アハブをそそのかして、ラモテ・ギルアデに攻め上らせ、そこで倒れさせるように仕向ける者は、だれかいないか』と持ち出しました。いろいろな意見が出た末、 

21. 一人の御使いが進み出て、『私がやりましょう』と申し出ました。

22.  『どういうふうにするのか』と、神様が尋ねると、御使いは答えました。 『私が出かけて、アハブの預言者全員に、うそをつかせてご覧に入れます。』神様はこれを聞いておっしゃいました。 『では、そうするがよい。 きっと成功する。』

23.  ご覧のとおり、神様は、ここにいる預言者全員の口に、うそをつく霊をお入れになりました。 しかし実際には、陛下に臨む災いをお告げになったのです。」

24.  すると、ケナアナの子ゼデキヤが、つかつかと歩み寄り、ミカヤの頬をなぐりつけました。「いつ神の御霊が私を離れ、おまえに語ったというのか。」

25.  「あなたが奥の間に隠れるようになった時、はっきりわかるでしょうよ。」

26.  アハブ王は、ミカヤを捕らえるように命じました。「こいつを、市長アモンと王子ヨアシュのところへ連れて行け。 

27. 『王の命令だ。 この男を牢につなぎ、わしが無事に帰って来るまで、やっと生きられるだけのパンと水をあてがっておけ』と言ってな。」

28.  ミカヤはすかさず言い返しました。 「万が一にも、陛下が無事にお戻りになるようなことがあったら、神様が私によってお語りにならなかった証拠です。」 そして、そばに立っている人々に、「私が言ったことを、よく覚えておきなさい」と言いました。

29.  イスラエルのアハブ王とユダのヨシャパテ王は、それぞれの軍隊を率いてラモテ・ギルアデに向かいました。

30.  アハブはヨシャパテに、「あなただけ王服を着ていてください」と言いました。そして、自分は普通の兵士に変装して、戦場に出かけたのです。 

31. そうしたのは、シリヤ王が配下の戦車隊長三十二人に、「戦う相手はアハブ王一人だ」と命じていたからです。 

32-33. 彼らは王服を着たヨシャパテ王を見て、「あれがねらっている相手だ」と思い、いっせいに攻めかかりました。 しかし、ヨシャパテが大声で名のりをあげると、すぐ引き返しました。 

34. ところが、ある兵士が放った矢が、たまたまアハブ王のよろいの継ぎ目に命中したのです。「戦場から連れ出してくれ。 深手を負ってしまった」と、王はうめきながら戦車の御者に語りかけました。

35.  その日、時がたつにつれて、戦いはますます激しくなりました。 王は戦車の中で、寄りかかるようにして立っていましたが、傷口から流れ出る血は床板を真っ赤に染め、夕方になって、ついに息絶えました。 

36-37. ちょうど日没のころ、兵士たちの間に、「戦いは終わったぞ。 王は死んだから、みんな家へ帰れ!」という叫び声が伝わりました。王の遺体はサマリヤに運ばれて葬られました。 

38. 王の戦車とよろいを、売春婦たちが身を洗うサマリヤの池で洗っていると、犬が来て血をなめました。 こうして、神様のお告げどおりになりました。

39.  その他、アハブ王が象牙の宮殿を建て、町々をつくったことなどについては、『イスラエル諸王の年代記』に記録されています。 

40. こうして、アハブ王は先祖代々の墓地に葬られ、息子アハズヤが、新しい王となりました。

41.  ところで、イスラエルの王アハブの即位後四年目に、ユダでアサの子ヨシャパテが王となりました。 

42. ヨシャパテが王位についたのは三十五歳の時で、二十五年間エルサレムで治めました。 母親はシルヒの娘のアズバです。 

43. ヨシャパテ王は、父アサにならって、すべての面で神様に従いました。 ただし、丘の上の礼拝所だけは取り除かなかったので、人々は相変わらず、そこでいけにえをささげ、香をたき続けました。 

44. 王はまた、イスラエルのアハブ王と平和協定を結びました。 

45. 王のその他の行為、輝かしい功績と武勲などは、『ユダ諸王の年代記』に記録されています。

46.  王は、父アサの時代からあった男娼の家を、一つ残らず取り除きました。 

47. そのころ、エドムには王がなく、代官が置かれているだけでした。

48.  ヨシャパテ王はオフィルの金を手に入れようと、大船団をつくりました。 ところが、その船団がエツヨン・ゲベルで難破したので、目的を果たせませんでした。 

49. アハブの王位を継いだ息子のアハズヤ王は、「私の家来もいっしょにオフィルへ行かせてください」と申し出ました。 しかしヨシャパテ王は、その申し出を断わったのです。

50.  ヨシャパテ王は死んで、先祖とともに父祖ダビデの町エルサレムに葬られ、息子ヨラムが王位につきました。 

51. アハブの子アハズヤは、ユダの王ヨシャパテの即位後十七年目に、サマリヤでイスラエルの王となりました。 アハズヤは二年のあいだ治めましたが、 

52-53. 良い王ではありませんでした。 両親はもとより、イスラエルを偶像礼拝の罪に誘い込んだヤロブアムにも、ならったからです。 こうして、イスラエルの神様の激しい怒りを買いました。