12. そしてヨナタンに、「さあ、ここまで来い。 痛い目に会わせてやるぞ!」と大声で呼びかけたではありませんか。ヨナタンはそばの若者に叫びました。 「さあ、あとから登って来い。 神様が私たちを助けて、勝利をもたらしてくださるぞ!」
13. 二人は手とひざでよじ登りました。 ペリシテ人がしりごみするところを、ヨナタンと若者は右に左に切り倒しました。
14. このとき殺されたのは約二十人で、一くびきの牛が半日で耕す広さの所に死体が散乱しました。
15. 不意をつかれて、ペリシテ軍の全陣営、とりわけ先の侵略部隊は、パニック状態に陥りました。 大地震にでもみまわれたように、恐怖はつのる一方でした。
16. ギブアにいるサウルの陣営では、見張りの番兵が思いがけない光景を目のあたりにしました。 ペリシテ人の大軍が、うろたえて右往左往し始めたのです。
17. サウルは、「だれかここから消えた者がいるか調べろ」と命じました。 調べると、ヨナタンと側近の若者がいません。
18. サウルはアヒヤに、「神の箱を持って来い」と叫びました。 そのころ、この箱はイスラエル国民の間にあったからです。
19. ところが、サウルが祭司と話している間に、ペリシテ人の陣営の騒ぎは、ますます大きくなります。 サウルは、「早くしろ! いったい神様は、何と言っておられるのだ」とせき立てました。
20. サウルと六百の兵は、大急ぎで戦場に駆けつけました。 すると、どうでしょう。 ペリシテ人が同士打ちをしており、どこもかしこも収拾がつかない有様です。
21. それまでペリシテ軍に徴兵されていたイスラエル人も、寝返ってイスラエル側につきました。
22. ついには、山地に隠れていた者まで、ペリシテ人が逃げ出すのを見て、追撃に加わりました。
23. こうして、この日、神様はイスラエルを救ってくださったのです。 もっとも、戦闘はベテ・アベンに場所を移して、まだ続いていました。
24-25. ところで、サウルはこう命じていました。 「夕方まで、すなわち、私が完全に敵に復讐するまで、何も口にするな。 もし食べる者があれば、のろわれる。」 それで、森に入ると地面に蜜ばちの巣があったのに、人々は目もくれず、まる一日、何も食べなかったのです。
26. サウルののろいを恐れていたからです。
27. ところが、ヨナタンは父の命令を知りません。 手にしていた杖を巣にちょっと浸して、なめてみました。 すると、体中に力がわいてきたのです。
28. その時、だれかが耳打ちしました。 「お父上は、きょう、食物を口にする者にのろいをおかけになったのですよ。 ですから、みんなへとへとに疲れているんです。」
29. 「そりゃ無茶だ!」 ヨナタンは思わず叫びました。 「そんな命令は、みんなを苦しめるだけじゃないか。 この蜜をちょっぴりなめただけで、私は元気になった。
30. もしわが軍が、敵陣で見つけた食糧を自由に食べてよいことになっていたら、もっと大ぜいペリシテ人を殺せたろうに。」
31. 一日中すきっ腹をかかえ、彼らは、ミクマスからアヤロンにかけて、ペリシテ人を追いかけ、殺したのです。 みな、ぐったりしていました。