チャプター

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  10. 10
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旧約聖書

新約聖書

マルコによる福音書 15 リビングバイブル (JLB)

1.  朝早く、祭司長と長老、それにユダヤ教の教師たちからなる最高会議の全議員が、次の手はずをあれこれ協議した結果、縛ったまま、イエスをローマ総督ピラトに引き渡すことに決まりました。

2.  「おまえはユダヤ人の王なのか」というピラトの尋問に、イエスは「そのとおりです」とお答えになりました。

3.  そこで祭司長たちは、あることないことを挙げつらね、イエスを訴えました。 

4. これを聞いたピラトは、「どうして何も言わないのか。 あんなにまで訴えているのに、平気なのか」と尋ねました。

5.  しかしイエスは、ひと言もお答えになりません。 これにはピラトも、驚き、あきれてしまいました。

6.  さてピラトは、毎年、過越の祭りには、人々の願うままにユダヤ人の囚人を一人、釈放してやることにしていました。

7. たまたまこの時、暴動で人殺しをし、投獄されていた暴徒たちの中に、バラバという男がいました。

8.  群衆はピラトの前に押し寄せ、例年どおり囚人を釈放するよう迫りました。

9.  そこで、ピラトは尋ねました。 「『ユダヤ人の王』を釈放してほしいのか。 おまえたちが赦してほしいのはこの男か。」 

10. こう言ったのは、イエスが捕らえられたのは、彼の人気をねたむ祭司長たちのでっち上げによる、とにらんだからです。

11.  ところが、祭司長たちも抜かりはありません。 たくみに群衆をけしかけ、イエスではなくバラバの釈放を要求させたのです。

12.  「バラバは釈放するとして、おまえたちが王と呼んでいるあの男は、いったいどうするつもりか。」

13.  「十字架につけろ!」

14.  「なぜだ。 ええっ、あの男が、いったいどんな悪事を働いたというのだ!」それでも群衆はおさまりません。 なおも大声で、「十字架につけろ!」とわめき続けます。

15.  ピラトは群衆のきげんをそこねたくなかったので、結局、バラバを釈放することにしました。 イエスのほうは、先端に鉛のついたむちで打たせてから、十字架につけるために引き渡しました。

16.  ローマ兵たちは、イエスを総督官邸内の兵営に引っ立てて行き、全部隊を召集しました。 

17. その目の前で、イエスに紫色のガウンを着せ、長く鋭いとげのあるいばらで冠を作り、頭にかぶせると、 

18. 「よおっ、ユダヤ人の王様」とはやし立て、皮肉たっぷり敬礼しました。 

19. それから、頭を葦の棒でたたいたり、つばきをかけたり、ひれ伏して拝むまねをしたりして、からかいました。

20.  こうしてさんざん笑いものにしたあげく、紫色のガウンをはぎとってもとの着物をきせ、いよいよ、十字架につけるために引き出しました。

21.  途中、ちょうど、田舎から来合わせていたクレネ人のシモンという男に、むりやりイエスの十字架を背負わせました〔シモンは、アレキサンデルとルポスの父親です〕。

22.  兵士たちは、イエスをゴルゴタ〔がいこつ〕と呼ばれる場所に連れて行きました。 

23. そこで、没薬を混ぜたぶどう酒(痛みを和らげる飲み物)を飲ませようとしましたが、イエスはお断わりになりました。 

24. 兵士たちは、イエスを十字架につけてしまうと、さっそくくじを引き、その着物を分け合いました。

25.  イエスが十字架につけられたのは、朝の九時ごろでした。

26.  イエスの頭上には、罪状書きが掲げられ、それには「ユダヤ人の王」と書いてありました。

27.  その日、二人の強盗も、イエスといっしょに十字架につけられました。 二人の十字架はイエスの両側でした。 

28. こうして、『彼は罪人の一人に数えられた』という聖書(旧約)のことばどおりになったのです。

29-30. 刑場のそばを通りかかった人たちは、大げさな身ぶりをしながら、「ざまあみろ! 神殿を打ちこわして三日で建て直すんだってなあ、そんなに偉いなら、たった今、十字架から降りて来いよ、自分を救ったらどうなんだい!」と、口ぎたなくイエスをののしりました。

31.  祭司長やユダヤ人の指導者たちも、同じようにあざけりました。「ふん、人を救っても、自分は救えないというわけか。」

32.  「よおよお、キリスト様。 イスラエルの王様。 十字架から降りてみろ。 そうしたら、信じてやろうじゃないか。」イエスの両側で十字架につけられていた強盗までが、悪口をあびせました。

33.  さて、正午にもなったころ、急にあたりが暗くなり、一面やみにおおわれました。 それが、なんと三時間も続いたのです。

34.  三時ごろ、イエスは大声で「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と叫ばれました。 それは「わが神、わが神。 どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味です。

35.  近くで、その声を聞いた人の中には、預言者エリヤを呼んでいるのだと思う者もありました。 

36. その時、一人の男がさっと駆け寄り、海綿に酸っぱいぶどう酒を含ませると、それを葦の棒につけて、差し出しました。 そして、「さあ、エリヤがこいつを降ろしに来るかどうか、とくと拝見しようじゃないか」と言いました。

37.  イエスはもう一度大声で叫ぶと、息を引き取られました。

38.  するとどうでしょう。 神殿の幕が、上から下まで真っ二つに裂けたのです。

39.  十字架のそばに立っていたローマ軍の士官は、イエスの死の有様を見て、「この方はほんとうに神の子だった!」と叫びました。

40.  数人の婦人が、遠くから恐る恐るこの様子をながめていました。マグダラのマリヤ、小ヤコブとヨセの母マリヤ、サロメをはじめ、何人かの婦人たちです。 

41. この女たちは、イエスがガリラヤにおられた時、いつもお仕えしていたのです。 ほかにも大ぜいの婦人が、イエスといっしょにエルサレムまで来ていました。

42-43. 以上の出来事はすべて、安息日の前日に起こったことです。 その日の夕方、一人の人がピラトのところへ行き、勇気を奮い起こして、イエスの遺体を引き取りたいと申し出ました。 その人はアリマタヤ出身のヨセフといい、ユダヤの最高議会の有力な議員で、神の国が来ることを熱心に待ち望んでいました。

44.  ピラトは、イエスがもう死んでしまったとは、どうしても信じられません。 ローマ軍の士官を呼びつけ、しかと問いただしました。 

45. 士官が死を確認したので、それではと、遺体の引き取りを許可しました。

46.  ヨセフは亜麻布を何メートルも買って来ると、イエスの遺体を十字架から取り降ろし、布でくるんで、岩をくり抜いた墓の中に納め、入口は石を転がしてふさぎました。

47.  マグダラのマリヤとヨセの母マリヤとは、イエスが葬られるのをじっと見守っていました。イエスは復活した!