3. ヨセフの十人の兄は、こうして、エジプトへ穀物を買いに行くことになりました。
4. しかしヤコブは、ヨセフの弟ベニヤミンだけは、どうしても行かせませんでした。 〔ヨセフの時のように〕ベニヤミンの身にも何か悪いことが起こるといけない、と思ったのです。
5. 買い出しに行ったのは、イスラエルの息子たちばかりではありません。 ほかの国からも、大ぜいの人がエジプトへ行きました。 カナンのききんは、どこにも劣らないくらいひどかったのです。
6. 兄たちは、エジプトの総理大臣で、穀物を売る責任者のところへ出かけました。 まさかその人が弟のヨセフだとは思いもよりません。 顔を地につけんばかりに深々と頭を下げました。
7. ヨセフはひと目で兄たちだとわかりましたが、わざとそ知らぬふりをし、きびしく問いただしました。「おまえたちはどこから来たのか。」「カナンの国からまいりました。 穀物を少し分けていただきたいと思いまして……。」
8-9. 兄たちはまだ気づきません。 ヨセフはふっと少年時代の夢を思い出し、荒々しく問い詰めました。 「おまえたちはスパイに違いない。 わが国がききんでどんなに苦しんでいるか、調べに来たのだろう。」
10. 「とんでもございません。 ほんとうに食糧を買いにまいっただけでございます。
11. 私どもはみな兄弟で、まっとうな人間です。スパイだなんてめっそうもありません。」
12. 「いーや、スパイだ。 そうに決まっている。 われわれがどのくらい弱ったか見に来たのだ。」
13. 「恐れながら申し上げます。 私どもは十二人兄弟で、父親はカナンの地におります。 末の弟は父のところに残りました。 もう一人は死んでしまいましたが……。」
14. 「それがどうしたっ! 何の関係もないではないか。 やはりスパイに違いない。
15. もしおまえたちの言うとおりなら、その末の弟を連れて来い。 それまではエジプトから一歩たりとも出ることは許さん。
16. だれか一人が出かけて、弟を連れて来い。 あとの者は全員、牢の中で待つがいい。 そうすれば、おまえたちの申し立てがほんとうかどうかわかる。 もし弟がいなければ、おまえたちは間違いなくスパイだ。」
17. ヨセフは一同を三日のあいだ牢に入れておきました。
18. 三日目にヨセフは言いました。 「私は神様を恐れる人間だ。 もしおまえたちが潔白なら、それを証明する機会を与えてやろう。
19. 一応おまえたちの申し立てを信じる。 一人だけここに残れば、あとの者は穀物を持って帰ってよい。
20. ただし、末の弟を連れて来るのだ。 おまえたちが正直かどうか、確かめなければならないからな。 うそでないとわかれば、いのちは助けよう。」 一同は言われたとおりにすることにしました。