6-7. ところが、シェケムの父ハモルのほうから、わざわざ出向いて来たのです。 ちょうどそこへ、ヤコブの息子たちも戻って来ました。 彼らは話を聞いて、びっくりするやら、腹が立つやらで、どうにも気持ちがおさまりません。もちろん黙って見のがすわけにはいきません。 こうなったら、妹ひとりの問題ではなく、家族全体に対する辱しめだといきり立ちました。
8. ハモルの申し出はこうです。 「今度のことは、いいかげんな気持ちからじゃありません。 息子はほんとうにお宅の娘さんが好きなのですよ。 妻にいただきたいと心から願っております。 いかがなものでしょう。 二人の結婚をお許し願えないでしょうか。
9-10. 皆さんが私どもの土地に住み、お近づきになってくださったら幸いです。娘さんを嫁にいただければ、私どもの娘もお宅の若い人たちに差し上げましょう。 どこでもお好きな所に住んでください。 商売をなさってもけっこうです。 きっともうかりますよ。」
11-12. シェケムも、愛するディナの父親と兄弟たちに頼みました。「お願いです。 どうぞディナさんをぼくに下さい。 お望みのものは何でも差し上げます。 贈り物でもお金でも。 ですから、どうぞ結婚させてください。」
13. 兄たちは、シェケムとハモルをだます計画を考えました。 シェケムが妹にひどい仕打ちをした仕返しをしようというのです。
14. 「ちょっと待ってくださいよ。 それはできない相談だな。 あなたたちは割礼(男子が生まれて八日目にその生殖器の包皮を切り取る儀式)を受けていないからね、そういう人と妹を結婚させるのは一家の恥ですよ。
15. もっとも、あなたたちが一人残らず割礼を受けるというなら、話は別ですがね。
16. そうすれば、われわれもあなたたちの部族から嫁をもらうし、お互い親戚同士になれるというわけです。
17. いやなら、しかたありません。 妹を連れてここから出て行きましょう。」
18-19. ハモルとシェケムは喜んで提案を受け入れ、すぐさま言われたとおりにすることにしました。 シェケムはディナを深く愛していたので、この計画を町のほかの男たちに勧めるのは、少しも苦ではありませんでした。 それに、彼は人気があり、町の人たちから尊敬されていたのです。
20. ハモルとシェケムは町の議会で提案しました。
21. 「あの人たちは味方だ。 ここに住んでもらって、自由に商売してもらおうじゃないか。 土地は十分あるから心配ない。 彼らと親戚になったら、大いに有利だと思う。
22. ただ、そのためには一つだけ条件がある。 男はみな、彼らと同じように割礼を受けなければならないというんだ。
23. 簡単なことじゃないか。 ただそれだけで彼らのものは全部われわれのものになり、この土地も豊かになる。 どうだみんな、あの人たちがここに住めるように、この提案に賛成してくれないか。」